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My Room

「私の部屋」では、自分の考えや思い、そして対談をご紹介させて頂きます。

より人間らしい社会へ

 

 不況が深刻化している現在、このような時こそ私は、芸術・文化活動が見直されるべきではないかと思っています。社会のほどよい競争は必要ですが、現在の過熱しすぎた資本主義競争に対する懸念があります。(経済界の過度な競争により、地球環境を汚染している例も多々あります。)現首相が仰っておられましたが、本来「人間のための経済」であるべきであり、「経済のための人間」ではないのです。経済のために人間が翻弄されてしまっては、真の意味で豊かな生活は実現出来ないのではないでしょうか。GDPに対し、GNH(gross national happiness、国民総幸福量)などという言葉もありますが、経済成長だけに頼らない心の豊かさの追求は出来ないものでしょうか?

  本来、日本人には「惻隠の情」、つまり、弱者に対するよき憐れみというものがありましたが、現在はそれが蔑ろにされ、(経済的に)強い者だけが生き残り、そこに取り残された人間は何も出来ずにおちこぼれていく。その様な事から人と人とのつながり、つまり「絆」も失われかけていく。そんな社会で本当に良いのでしょうか?

 私は、音楽活動を通して、自分の想いが少しでも多くの方に届き、心の憩いの場となれば光栄に存じます。「ひとりの命を救う事は全世界を救うのと同じ事である」というユダヤのことわざがあります。私の音楽は命までを救うことはできないかもしれませんが、この様な教えを大事にして、自分が社会に対して出来ることをこれからも行っていきたいと考えております。

 よりよい未来のために、人間の活動を根本から見直す時期ではないでしょうか。こういう時にこそ芸術は何かヒントを与えてくれるかもしれません。

 

(2010年 3月)

 

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